零式の演劇で大きな嘘からほんの僅かな希望を見せたいのです。現実には無いに等しいであろう希望を掴もうと、手を伸ばしています。掴むためには、その手をまず透明にする必要があり、その透明な手が目に見えたときにはじめて、何かを掴んだ気分になれそうな気がしております。最終的に演出家・役者・観客が、新種の昂揚感・満足感を共に発見することができれば幸いです。

以下、上演履歴・作品紹介

 
第9回公演「K」 
2007/9/5〜10  於 下北沢 小劇場 楽園   *特集ページ

僕の妻は「つぼみ」といった
彼女の肌は
香りとかなんとか
不確かな喜びを守る花ビラの盾

僕は黙って彼女を食事に誘った。
僕は黙って蕾を裂いた。

   

第8回公演「返事」(こまばアゴラ劇場提携公演)  
2006/7/22〜31  於 こまばアゴラ劇場   *特集ページ

--- 僕と少女の幽霊は同じモノが欲しかった。
ラムネ売りの少年と、川で溺れた少女の幽霊。少女は少年に取り憑いていた。
少年が死んで、仕方なくラムネ瓶に取り憑いた少女は今、小さな島の、
瓶のリサイクル工場にいた。
「もしも魂がリサイクルできるなら、あの時の返事を聞かせてください」
返事を待ち続ける少女の瓶は、どんな熱されても溶けることがなかった。
ビー玉越しに少女の幽霊が見えるのは、従業員達の噂である。
本公演の「返事」はあっさりと示された天国への階段を、
怪しんで昇らない愛すべきあなたへ送る、挑戦的メタレクイエム。

第12回劇作家協会新人戯曲賞優秀賞受賞

第7回公演「ブリキ・ゴーレム」(王子小劇場賛助公演)  
2005/11/24〜27  於 王子小劇場   *特集ページ
舞台は古めかしいマンションの一室。部屋には男(サロ)と女(フェア)。
パズルをしている。男は左手がつかえない。ふたりは、部屋の中に見えない鳥を飼っている。サロは過去に、慰められたことに腹を立て、フェアを殴ったことがある。フェアは一連のいきさつの記憶を都合のいいように消し、「殴ったこと」でサロの左手が動かないのだと信じている。 ある日、サロは部屋から去った。残されるフェア。
お守りと告げられ、ブリキ製のロボット型おもちゃを残された。足裏には連絡先があり、業者があらわれる。使用方法は、ロボットの額に「EMETH(真実)」と書かれた羊皮紙を貼る。「E」の文字を消すと、「METH(死)」を意味する。とのこと。しかし、どうしても「EMETH(真実)」とかけないフェア。次々と部屋に現れるマッサージ兄弟、夫婦、掃除婦、そして旅から帰ってきた家主。一人ぼっちの家主が出て行き、真実を思い出しかけたフェアは、ロボットに「EMETH(真実)」と書いてみた。真実がみえた。なんとフェアは、元恋人と暮らすサロの部屋を訪れていた、小汚い掃除婦だった。サロを慰めたフェアが殴られる瞬間、飾ってあった鳥のパズルが激しく崩れ落ちる。
王子小劇場主催2005年佐藤佐吉賞、優秀脚本賞:新井哲
2006年3月1日〜15日 SKY PerfecTV! ch239『theatre plateaux』にて「ブリキ・ゴーレム」が放映されました。

第六回公演「半寝」(王子小劇場賛助公演)
2005/2/17〜20  於 王子小劇場
青い十字型の舞台が中央に。
時計屋の元に、一人の幼児(弐丸)が現れる。弐丸は自分が誰だか知らない。
女性になりたい医者(サルガッソー)の元に、性転換手術をもとめて男(鬼山)がやってくる。鬼山一人を使って一つの女性器ができ、それを自分に移植する、と説明するサルガッソー。しかしそれは夢のできごとである。中盤、舞台中央から真っ赤な扉があらわれ、ここから現実の物語が始まる。
実はサルガッソーは夫がいながら浮気をする自分の女の性を悲しく思い、女性器を摘出する手術を行ったのだった。夫の元へ帰ってくると、夫もまた女(キカ)と浮気をしていた。サルガッソーは、「あなたの性器も切り離して。私達男でも女でもなくなって、ただの夫婦になるの。そこには、思いやりしかないの。」と言い、夫を刺してしまう。弐丸は、サルガッソーの、女性としての身体から生まれたかもしれなかった、生まれない命だった。二人は、最後に「朝が来るまで添い寝しよう」と約束し、長い、完全な眠りにつく。
第24回新風舎出版賞出版化推薦作

第五回公演「或女の石々」
2004/7/15〜18  於 門仲天井ホール
舞台には遺跡のような壁が立っている。
壁の向こう側で植えた花の種を、壁のこちら側で咲かそうとする話。
ある新婚夫婦(田村、よしこ)の新居に、ある日ドラッグまみれの少女(麟)が倒れていたと田村の級友(洋平)が舞い込む。麟が目覚めると、突然黒猫が現れ、田村夫妻の新居の『壁』はみるみる古いお城の『城壁』となる。仕方なく、青いドレスのお姫様(塔)がお城で経営している「壁ホテル」を手伝う夫婦と少女。洋平は誤解で殺され、魂を塔に奪われる。塔は、生き物の魂を集め続け、かつて銃で撃たれて死んだペンキ職人(タム)を復活させて、壁の向う側にいるタムとの逢瀬を楽しむ。二人はいつもそれぞれの壁の内側に花の種を植えていた。
タムは自分のために塔が人を殺してきたことを知り、塔に別れを告げる。失恋した塔が、ホテルを閉じ、壁を崩すと、壁の中にはたくさんの花が咲いていた。タムが現れ、塔とタムは「海と空の間にある壁を探しに行くの。」と言い、水平線をめざす。
第10回劇作家協会新人戯曲賞優秀賞(2004年)

企画公演「ご機嫌うるわしう10年前の私 」
2003/6/26〜29  於 門仲天井ホール
『ハイム地獄』
いわれの無い理由で閉じ込められている女二人と男。それぞれ手と首に手錠をかけられている。水滴の数を数えて、時間を計っている。なぜこの場所にいるのかわからない
3人は、それぞれの記憶とつじつまを合わせようと苦戦する。徐々にこの状況が罰ではないと思い始める3人。そこへ、助産婦が命綱片手にあらわれる。助産婦は男に、「あなたのお母さんは美人です、出口を出たら大きな声で『おぎゃあ!』と言いなさい!」と綱につかませる。牢屋は、命の生まれ変わりを待つ平屋の待合室、「ハイム地獄」であった。

『カノン』(創作ダンス)
パッフェルベルのカノンの音楽にあわせ、電車の中でゆれる女性と少女。客が乗ってきてダンスが始まる。駅員が線路をつくり、向うから、ランドセルを背負った少女が車椅子にのってあらわれる。お辞儀をするとランドセルの中からサクラ吹雪が。初春のご挨拶。


第四回公演「バイソンの足」
2004/7/15〜18  於 新生館スタジオ
コンクリート詰め殺人(実際の事件)の被害者に、せめて海を見せてあげたいと願う話。舞台上には僅かな砂。そしてドラム缶。そのドラム缶からは、一本の女性の足が突き出している。そのドラム缶を押しながら海を目指している一人の男。彼は山にある自分の家に一人の娘を残している。娘のために海を探していると言いながらも、実は鞄の中に重い石をいくつも忍ばせていた。
彼は海を目指す。が、正確な場所は分からず、辿り着くことができない。そんな彼は、ジョギング中の一人の女と出会う。そのドラム缶が出現してから、その街にはジョギングが流行っているのだ。人々はそのドラム缶にタッチして引き返す。女はドラム缶の中に入り、男と共に海を目指す。そして、まもなくその街を大津波が襲おうとしていた。

第三回公演「セ氏の妖女」(冬のサミット参加作品)
2003/1/11〜1/13  於 こまばアゴラ劇場
万年冬の国。薬屋の主人の元へ、終わったはずの戦争の召集令状が届く。
召集令状にはキスマークがついていた。
誘惑された主人が戦場に赴くと雪女がいた。その正体は、足繁く薬屋に通う病気の女だ。
彼女はただの風邪だったが、人の温度に焦がれるあまり、雪女に変身したのだった。
主人が降伏した時、彼女も病気との戦いに敗れ、命を失った。
雪女が死んで初めてこの国に春が訪れる。「戦争を終わらせてきた」と帰途についた主人を待っていたのは、醜い化け物に姿を変えた妻だった。
彼女もまた、凍てついた心を持つ雪女に変身していたのだった。
詫びる主人に妻は「風呂に入りたい」とだけ言った。その言葉を最後に妻は、湯船で溶けた。
平成14年度文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作受賞作

第二回公演「永代看板娘」(夏のサミット参加作品)
2002/8/13〜15  於 こまばアゴラ劇場
牛乳売りの娘に恋をした男が、ゲイのフリをして近づく話。
女は左眼が見えない。目の手術の為に、女はヤクザな方法で金を貯めている。
黒いキューピーがあらわれる。
発狂しはじめる女の元に、父があらわれる。
それはフラれた男が、今度は父親のフリをして女のそばにいたのだった。
次々と看板が運ばれ、次々と倒れていく。

旗揚げ公演「踊れない夜に鳴く」
2000/9/1〜3  於 高田馬場アートボックスホール
不器用すぎた家族の物語。
ボランティアをしていた夫は、風船おじさんに憧れて空へ旅立つ。
妻は自分なりの正常を保つために、常軌を逸していた。
駆落ちしていた娘が帰宅すると、家は嫉妬した駆落ち相手に放火された。
だが、夫がかつて偶然助けた河童が緑色の雨を降らせ、ゆっくりと鎮火した。
娘は、瓦礫の中、生きている母の葬式を優しく行い、去った。
葬られた妻の元へ、夫から最後の電話が入る。優しすぎる声だった。
妻は切れた電話に泣いて笑って「馬鹿」と告げ、
傘をクルクルまわして瓦礫の家を出て行った。
 



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